ホットユニゾン





『あなたに才能はありません』
神様かわからないけれど、僕のイイ耳にはハッキリとそう聞こえた。





「お疲れ様、少し休憩しようか。」
「うん、そうだね。」
教会でのコンサートまであと少しの日、屋上で僕は日野さんと練習していた。 正直、嬉しい気持ちもあったけれど、どこか喪失感を感じてる。
僕は・・・
「加地くん?」
「えっ、あ・・ごめん。少しボーっとしてたみたい。」
憧れてるだけ。近づけたらいいのにやっぱり僕と君は違うから。その音色 のチカラが僕を保護してくれたら。結局は反古になったけど。指先から ゾクっと波が迫ってその音に触れた瞬間、鳥肌が立って胸の奥は熱くなるし 体中の細胞は踊りだすし。母親のひざにすがるような。君の音は優しくて 涙の一粒一粒をすくってくれる感覚がするんだ。 だからこそ近づきたい。旋律に重なりたいけど、まるで僕の努力は淘汰する だけ。
「ねえ、ワガママかもしれないけど君の音が聴きたいんだ。」
今はただ、癒してほしい。天上のメロディで何もかもを白く染めるように包んでほしい。
「あたたかいよね、日野さんのヴァイオリンの音って。」
何度聴いても「好き」って言葉が吹き出す。もしかしたら愛しさを感じてるのかもしれない。






「加地くんのヴィオラもあたたかいよね。」



「えっ?」







「私、好きだなあ。」



もしかしたら、この言葉をずっとずっと待っていたのかもしれない。
しあわせ者だな僕は。お願いします。どうかこれが夢じゃないと、誰か空気の 振動で伝えて。






(愛してほしい、僕も僕の音楽も。)