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ラストスマイル いつかこんな日が来ることはずっと前からわかっていたけど、知りたくも見たくもなかった。 今ならばこの願いの本当の意味がわかるかもしれない。 「神さま、どうかこのまま時を止めてください。」 ウィーンなんて遠くないわよ。だって同じ世界にあるんだから。そう言えたらどんなに 楽なんだろ。きっと音楽は月森くんを求めていて、月森くんもまた音楽を求めているだろう。 いつかは留学なんて当たり前だろうって思ってたのに、目の当たりにした直後。悲しかった。 涙が止まらなかった。わからないけど、ただ涙は流れていく。音楽を志す人間は孤独なんだと、 その言葉はどこまでも果てしなく心に突き抜けていく。私はどっちなんだろ?ひとりに なりたくないのか、ひとりにしたくないのか。答えはどちらでもない。『一緒にいたい』んだ。 でも本音を晒せば困らせてしまうだけ。迷惑なだけ。月森くんの低くて優しいテノールで 「さようなら」なんて言われたらきっと私泣くよ。「さようなら」って言ってほしくない。 一緒に下校したら、「さようなら」は普通に交わすけどそんなレベルじゃない。 離れたくない。ここにいて、ずっと。二度と旋律が聴けなくなりそうで怖い。雫が落ちないように 顔をあげていても広い空は容赦なく迫ってくるから、幾度も頬を伝う。頭ではいけないとわかっていても 、どこかで音楽と自分を比べちゃってる。最低だ。月森くんはそんなことこれっぽっちも望んでなんかいない。 私ってこんなだっけ?祝福するって単語が1回も出てこない。「頑張って」ただその一言。私のほうが 言うまでに頑張れない気がする。 『君の道と俺の道はもう一度必ず交わる日がくると』 100%はまだ信じられないけど、きっと信じられる日がくるよね。私は月森くんが好きだから。まずは この想いを信じてる。見送るあなたの背中に向かって。私、ちゃんと上手に笑えてますか? ━苦しみの先にこそ本当のよろこびがある━ (いつか隣で一緒に歩んで行ける日を) |