セレナード





俺にとってお前はなんだと聞かれたら、きっと答えない。答えられない。 俺にでも表せないその存在はただただ愛しい。
「ずっとそばにいればいいんだよ、お前は。」
くしゃりと前髪をかきあげて、おでこに唇を落とす。それと同時に服の裾が 引っ張られる感覚がした。今にも泣き出しそうな表情でぽつりと。
「そばにいて、いいんですか?」
まるで子供のようだな。こんな弱い部分はめったに見たことがない。精一杯の 優しさでそっと身体を引き寄せる。
「いいから言ってるんだよ。」
俺はお前でなければ嫌だ。なんだ、自分も子供みたいじゃないか。毎日学院で 会えるけれど、1日で計算すると断然会えない時間のほうが多い。学院にいると 言っても、学年が違うからなおさら会えない。ずっと見ていたい。でないと不安になる。
「お前、寂しいの?」
無言でうなずく。
「香穂子。」
今度はくちづける。
「寂しいんだったら、俺のフルートをよく聴いとけ。」
「先輩のフルート?」
「そうだよ、俺の音だけを聴いてろ。」
俺だけの音を。他の誰でもない、俺の音色を。お前だけを想って吹くから。それでも不安な時が あるというなら、カーテンを開けて静かに窓を開けろ。必ず聴こえるだろう、俺のセレナードが。 窓辺に俺はいないけれどそこから見える夜の始まりの空には、お前を想う分だけ輝く星が見えるはず。
「じゃあ、私も柚木先輩のために弾きます。だから聴いていてくださいね。」
「どうしようかな?」
お前が笑ったら考えてやるよ。







(捧げてやるよ俺の旋律)