「吉羅さん、どうしたんですか?花束なんか持ってくるなんて。」
「墓参りの花でしてね。」



あのヴァイオリンの少女のね。





君へ還る




彼女がこの星奏学院を卒業してからしばらく経った。今日は卒業式があった日。いわゆる彼女の 【命日】だ。よくこの学校のあちらこちらで練習しているのを見ていたものだ。あまりにも鮮明 すぎたその姿は、同等に空しい。私は彼女に対していろいろ言ってきたが、何も知らずに終わっ てしまった。彼女が好きな物、嫌いな物、どんな演奏をしていたのか全て。だが、どうして今に なって思い出してしまったのか、わかりかねない。こうして彼女の髪の色に似た花を束にしてこ こにいるのだから。悲しい?辛い?苦しい?淋しい?そんな感情ではない。君は今頃、何をして いるのだろうか・・・そう募らせるだけだ。



屋上に出てみると、強風が打ちつけてくる。丁度良い。これなら時間もかからないだろう。私は 花束を勢いよく上に投げた。その瞬間、赤い花びらが辺り一面に散らばって、天高く舞い上がっ た。さあ、早く飛び散って行くが良い。一粒残らず。私の、この胸に生まれ満ち溢れた彼女への 淡白な恋心も何もかも。静かに眠るといい。




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「もうお帰りになられるんですか?」
「ええ、用件は済ませたものでね。」
「そうですか・・そういえば先程、吉羅さんにお会いしたいと電話がありまして。」
「私に?」
「はい。なんでもうちの卒業生で音楽コンクールにも出てました日野香穂子から・・・」




甦る 記憶の片隅にあった 君が 君へ 降り積もった 想い が