|
MAGICAL KISS 私はいつのまにか心奪われていた。 時に厳しく正しく教えてくれて、時に目に見えない優しさを与えてくれたあの人に。 「練習の帰りかね。」 「吉羅さん!」 ちょうど練習を終えて帰ろうとする所に声をかけられた。 「はい、そうですけど…」 「練習は大いに結構だが体調を崩さないでくれたまえ。」 「ありがとうございますっ、気をつけます。」 初めて会ったときより少しだけ柔らかくなった表情は私の鼓動を速めるには十分すぎた。 顔立ちも悪くないしきっとモテるんだろうなぁー…なんてぼんやり考えていると、 「そういえば日野君、今日は何かの日だったか知っているかい?」 「今日?」 今日は確か10月31日だったような…あっ! 「今日はハロウィンじゃないですか?」 「ハロウィン…?」 「はい。トリックオアトリートと言ってお菓子をくれないとイタズラするぞと言 う意味なんですけど、その決まり文句を言って家を回ってお菓子を交換する日で す。」 「ああ、そんな日もあったかな。」 忘れていたよ。 なんて呟くあなたがらしくてかわいいなぁ…とは口が裂けても言えない。 「どうりで…。」 「えっ、」 「どうりで女子生徒たちが菓子を持って騒いでるわけだ。」 「あ、あぁ…。」 ビックリした。 もしかしたら吉羅さんがお菓子あげたり貰ったりしてるのかと思った。それはそれでちょっと嫌だったけど。 「日野君。」 「は、はいっ」 「トリックオアトリート。」 「へ?」 名前を呼ばれて驚いたけど、それよりもこの人が口にした言葉に驚いた。 「どういう意味ですか?」 「そのままの意味だが。」 え?そのままってことは吉羅さんお菓子をくれって言ってるの? 「君も女性なのだからお菓子のひとつやふたつ持っていないのかね?」 「す、すみません…持ってきてはいたんですが友達に全部あげてしまったんです…」 うわー私のバカ!! なんで全部渡しちゃったんだろ。せっかくチャンスだったのに。 もっと余分に用意するんだったよ・・・。 「じゃあ言葉の意味そのままに・・」 「あのっ、私持ってないって言いましたよね・・?」 「何を言ってるのかね君は。お菓子をくれないのならイタズラすると言ったんだが。」 「は?」 まあ、それはそうだけどイタズラって? 「目を瞑りたまえ、日野君。」 「えっ?何でですか?」 「・・君は案外こういう事に鈍感なのだね。」 と言いながら、吉羅さんの顔が近づいてくる。 今にもくちびるとくちびるが触れてしまいそうなくらい・・・。 え!?もしかしてキ、キスしようとしてるの!!? そ、そそそんな急に、でも、あの、嫌じゃなくて、じゃない! その間にもくちびるは近づいてきて、おまけに腰を強く抱きしめられてて逃げれない。 絶対今の私の顔真っ赤なんだろう。心臓も爆発しそう。 えーい!とヤケになっておもいっきし目を瞑ると笑い声が聞こえてきた。 あれ? 「ハハハッ、イタズラが過ぎたようだ。」 「え?イタズラ??」 目をパチパチさせしばらくして納得すると同時にさっきよりも顔が真っ赤に熱くなった。 少しだけ期待していた自分がバカでマヌケで恥ずかしい。 「もうこんな時間か・・それでは用事があるので失礼する。」 何事もなかったかのようにあっさりした様子で言う。 ガッカリしたような淋しいような気持ちが溢れた。 そんな私の心境にも気がつかない吉羅さんは振り返ったと思ったら。 「私もあまり気が長いほうではないのでね。早く大人になることだ。」 気が長いほうじゃない?大人になれ?いまいち理解できない・・ 「でないと、君のくちびるに触れられないからね。」 そう言って、大人の笑みを含んでその場から立ち去って行った。 ドキドキする高鳴りは止まらない。愛しいと想う気持ちも止まらない。 絶対にいい大人の女になって、イタズラの続きをしてもらうんだから。 覚悟しておいてくださいね、理事長。 (一応ハロウィン話です。何かがおかしいけど勘弁してください) |