sweet memory







「じゃあ、今日の練習はここまでにしようか。」
「うん。お疲れさま、加地くん。」
「日野さんこそ、今日はお疲れさま。」
僕が日野さんと休日も練習をするようになったのは、つい最近だ。
まさか見ているだけが、いつの間にか一緒に奏でているなんて。


本当に幸せなハナシだ。


「ねぇ、この後なんだけど時間大丈夫?」
「うん。大丈夫だけど…何かあるの?」
「ちょっと一緒に行きたい場所があるんだ。」




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「ここは…」
「そう、僕が君を初めて見つけた場所だよ。」



潮風が僕の髪をなぞるように通り抜けて、空も美しい青のグラデーションを描いていて。
そうだ、今日はあの日にそっくりだ。



「君を見つけたときも、今日みたいな風や空だったな。」
「覚えてるの?」
「もちろん。だって僕にとって、」



僕にとってはかけがえのない宝物だから。
他の誰かにとっては変わらない1日だったとしても、僕は違う。
運命を世界を僕自信をやわらかな音色で変えた日だった。


「僕は忘れないよ。あの日のことも、今日のことも。」
「加地くん…」
「君と過ごす時間は絶対に忘れないよ。」



君はきっとわからないよ。
君という存在が僕の中でどれほど溢れているか。
幸せすぎて涙が出る感覚や切なすぎて心が揺れる感覚も。


君はわからない。
もう言葉には出来ないくらい、ただただ君を想う気持ちを。





「…私も忘れない。」
「日野さん?」
「加地くんと過ごす日々を。それと今日みたいなあの日も忘れない。」




「私が初めて加地くんに見つけてもらえた日も。」




そういって愛しく笑う君も、やっぱりあの日と変わらないね。