BIRTH DAY WALTZ





「桐也君、お誕生日おめでとう!」
「…どーも。」
「なんか軽くない?もっと喜んでくれてもいいのにっ、」
「いや、今日が自分の誕生日だって忘れてたんだよ。」



なんかやけに香穂子がテンション高く「30日絶対に会おうね」なんて言うから何かと思ったけど、3月30日は俺の誕生日だ。なんで香穂子が俺の誕生日を知ってるんだってわからなかったけど、そういえば喫茶店でお互いについて話してたときに言った覚えがある。そんな話ずっと前にしたのに、覚えてたのか。


まあ、嬉しいけどね。
そうゆうの…可愛くて。



「自分の誕生日忘れてたの?」
「あんまり気にしなかったからな。」
「なんか桐也君っポイね。」



なんてことを話しながら、俺達は手を繋ぎながら海岸通りに向かった。
そして目的地に着くと近くにあったベンチに座った。





「はい、これプレゼント。」
「プレゼント?」
「桐也君に似合うと思って…開けてみて。」
「あぁ。…シルバーのネックレス、」
「どうかな?」
「あんた、俺の好みわかってるじゃん。ありがと、大事にする。」
「ふふっ、よかった。」
「ホント、あんたって…」
「何?」
「なんでもないっ。で、これからどうする?」
「桐也君の誕生日なんだし、桐也君の行きたいところに行こうよ!」
「俺の行きたいところ…か。」
「何かいくつか行きたいところある?」
「じゃあ、どこも行かないでいい。」
「えっ、」



俺はあんたがいるならどこだって構わない。遊園地とかショッピングとか、そりゃ楽しいだろうけど。今日は俺のそばにずっといてほしい。なんかそんな気分なんだ。



「いいの?行きたい場所ないの?」
「いーのっ、」
「…うーん。じゃあ、何かしてほしいこととかある?」
「してほしいこと?」
「せっかくだし1つくらいは、お祝いみたいなことしたいしさ。」
「別にしてほしいことは………あ。」
「あった!?」
「ヴァイオリン。あんたのヴァイオリンが聞きたい。」
「私の…?」
「お祝いしてくれるんだろ?しかもあんた毎回ヴァイオリン持ってきてるし丁度いいじゃん。」
「う…ごめんなさい。」
「いいよ、もう慣れたし。で弾いてくれるの?」
「もちろんだよ。」




春の日差しの中、流れ出したメロディは陽気のように暖かい。冬眠してた生き物が踊りだして、蕾の花が咲き急いで。あんたの音色は心地よく目覚めさせるんだ。俺の胸の中にあった音楽も気持ちもすべて。こんな演奏をされたら誰だって生まれてきた喜びを感じずにいられない。あんたが俺を祝福してくれるなら、俺もあんたを祝福するよ。




「どうかな?」
「技術面はともかく感情がこもってて、よかったと思うよ。」
「ホント!?ありがとうっ。」
「礼を言うのはこっちだ。ありがとう、香穂子。」




誕生日って祝福されるんじゃなくて祝福し合う日なんだよな、きっと。
「生まれてきてくれてありがとう」
そう言ってくれる誰かがいなければ、誕生日なんて成立しないんだから。



香穂子、生まれてきてくれてありがとう。俺は出会えて幸せだよ。



俺の両親へ、生んでくれてありがとう。俺はこの世で一番愛しい人と音楽に出会えた。





生命の祝福はこうやって無限に奏でられていくもんかもね。


「来年も、こうやって祝ってくれるんだろ?」
「当たり前だよ。ずっと一緒なんだから。」
「ありがとう。香穂子。…好きだよ。」
「…私も。」





そう。
祝ってくれる誰かがいないと成立しないなら、
俺と来年も再来年も未来永劫に一緒にいてくれよな。






さあ、お手をどうぞ。



来年の誕生日まで、まだ踊りだしたばかり。