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これは愛 ロマンチックなムード。ただ無言で見つめあう。言葉はいらないよな?香穂子。 右手を後頭部、左手を肩に置いて、顔は斜めに傾ける。 そのまま顔を近づければ唇に触れ… 「……」 「衛藤くん?」 「…あんたさ、わかってる?」 「何を?」 「この状況」 「状況…衛藤くんと顔が近いってこと?」 「…普通さ目を閉じるだろ」 「なんで?」 「なんでって…」 ハアと大きく溜め息をついて香穂子から離れる。 「どうしたの?」 どうしたのじゃねーよ。最悪なことに香穂子は鈍感だ。 今だってキスされるってことに気がついてないんだから。 俺と香穂子が付き合い出してから何ヶ月が過ぎたことか。 未だにキスをしていない。ちょっとそんな雰囲気になっても、今みたいに全然気付きやしない。 ったく、こっちの身にもなってもらいたいもんだ。 「…何でもない」 「?変な衛藤くん」 「……………」 **************************** ある休日 「衛藤くんっ!」 「香穂子?」 「よかった!海岸通りにいると思ってたけど、いなかったらどうしようかと」 「それより何で来たんだよ?今日は別に約束してないだろ?」 「ヴァイオリン弾いてたら何だか衛藤くんに会いたくなっちゃって…」 「…………」 「あ、やっぱり迷惑だった?」 「別に…迷惑だなんて…思ってない」 あーもー何だよこの可愛さ。反則だろ。 いつもこうやって俺はあんたに惹かれまくってんだ。 あ、今だ。 キスしたい 「香穂子」 「うん?」 「目、閉じて」 「なんで?」 「いいから」 「また顔近づけるの?」 「違う」 「じゃあ…」 「キス、するから」 ポカンとした表情をする香穂子をよそに、だんだん顔を近づけて唇に触れ… 「待って!」 「え?」 顔を真っ赤にしながら手で唇を遮る香穂子。 やっと気付いたか…でもなんで待たなきゃいけないんだよ。 俺はどれだけ待ったか。 「もももしかしてあのときもキキキキスしようとしてたの?」 「そうだけど」 「なんでっ」 「したかったから」 「でも」 「ねぇ、してもいい?」 「ちょっと待って!」 「何?嫌なの?」 「それはっ…」 「…ならいいよ。もうしない。悪かったな」 なんだよ。俺だけかよ。 キスしたいって、触れたいって思ってたのは。 恥ずかしいしイライラする。 「俺…帰る」 「あっ、待って!」 「…待つ理由ないけど」 「あの、ごめんなさいっ!全然気づかなくて、衛藤くんが怒るのも無理ないよね…でも嫌じゃないの」 「香穂子…」 「私、衛藤くんにキスしてほしいっ」 「なっ…」 「さっき待ってって言ったのはその…私、初めてで、心の準備が出来てなかったから、つい…」 なんだよなんだよ。ズルいだろ。そんなこと言われたら、 ますます好きになるっつーの! 誰かこの可愛さをなんとかしてくれ。 「衛藤くん…?」 「じゃあ、キスして、いいんだな?」 「…うん」 ゆっくりと瞼を閉じる香穂子。唇の前に耳元に唇を寄せ、 「…俺もゴメン。あんたの気持ちとか見てなかったかも。でも俺だって…」 「…初めて、だからな」 柔らかい唇にやさしく触れた。 ああ、これが永遠っていう感覚なんだ。 しばらくしてどちらからともなく唇が離れる。 「…真っ赤」 「しょ、しょうがないよ!」 「ぷっ…」 「な、何で笑うの?」 「いや、やっぱり香穂子は可愛よ」 誰よりも誰よりも。 あんたはいつも俺を、カクテルのように甘く痺れて酔わせるんだ。 そしてそのまま あんたに溺れてく 夢のもっと先まで (俺はあんたの虜ってこと) |