ティータイム






明日は枝織ちゃんと一緒にお茶会をする約束をしている。場所は枝織ちゃんの家。つまり、冥加さんもいると言うこと。別に一緒にお茶をする約束はしてないけれど、会えるかもしれないと思ったら凄く嬉しかった。



「あっ!明日持って行くお菓子を作らなくちゃ!」



何にしようかなあ。何が喜んでくれるかなあ。もし冥加さんも食べるとしたら、甘いのは避けたほうがいいよね。そういえば夏休みに野菜ジュースをさしいれしたら、迷惑かもしれなかったけど一応受け取ってもらえた。めずらしく野菜を使ったお菓子に挑戦してみようかな。私は部屋にある本から野菜を使ったお菓子のレシピを探した。



次の日。手作りのお菓子と一緒に枝織ちゃんの家もとい冥加さんの元を訪れた。



ピンポーン



チャイムの音からしばらく経ってガチャと扉が開いた。そこにいたのは枝織ちゃんではなく、冥加さんだった。



「こ、こんにちは。」
「お前か…」
「あの、今日は枝織ちゃんと約束していて…」
「知っている。とりあえず入れ。」



相変わらずの表情で入るようにと言われたので、私はおそるおそるお邪魔することにした。



「…お邪魔します。」



冥加さんの家に来たのは初めてではない。でも毎回きちんと整頓されたお部屋が印象的だった。玄関からリビングまで来てみたけど、どこか静かだった。



「枝織ちゃんは?」
「急に体調が悪くなり病院へ向かった。」
「え!?大丈夫なんですか?」
「お前などの心配はいらぬ。念のために行かせただけだ。」
「そうなんだ…よかった、」
「俺はただお前にそれを伝えたまでだ。」
「ありがとうございます…」



枝織ちゃんと一緒にお茶出来ないのは残念だなあ。そういえばお菓子作って来たけど…どうしよう?冥加さんは…いらないって言われちゃいそうだな。ファイナルの後、冥加さんのヴァイオリンが聴こえて、戻って、会って、だから特に仲良くなったわけではないと思うし。(今まで私のこと憎んでたみたいだし。)少し変わったのは、貴様からお前に変わったことぐらいだけど。うーん、だから歩み寄れたかは謎だ。…今日はとりあえず帰ったほうがいいかな?



「じゃあ…私は失礼します。枝織ちゃんにお大事にと伝えておいてください。」
「…待て。」
「はい、」
「このまま帰すのは失礼だろう。紅茶の一杯くらい出してやる。待っていろ。」
「はい…」



そう言ってキッチンへ消えていった。ひとり残された私はちょこんとソファーに座った。以前の彼だったら絶対に私に紅茶なんかださなかったはず。でも今は違う。やっぱり彼はやさしい人なんだと思う。ふふっ、そう思ったら自然に笑みが出てきちゃう。冥加さんが見たら「何を笑っている。」って言うんだろうなあ。また笑みが出ちゃっ…



「何を笑っている?」
「えっ?!いや、なんでもないですっ」
「…可笑しな奴だな。」



いつの間にか戻ってきた冥加さんは、二人分のティーカップを机の上に置いた。



「ありがとうございます!」
「それを飲んだらとっとと帰るんだな。」
「はいっ」



迷惑そうな顔をして私の隣に座るけど、不謹慎かな?とても、うれしい。隣に座ることを許されたみたいで、私は安心した。そうだ。せっかくだからお菓子は冥加さんと一緒に食べよう。



「冥加さん。私お菓子を作ってきたんです。一緒に食べませんか?」
「お前が?」
「はい、食べずに持って帰るのもあれなんで。」
「…好きにしろ。」
「はい。」



私は机の上に作ってきたお菓子たちを並べた。冥加さんはそれを見て二人分のお皿とフォークとスプーンを取ってきてくれた。



「ありがとうございます。」
「礼を言われるような事ではない。」
「あのですね、これはキャロットケーキで、こっちはかぼちゃプリンです。」
「……………。」
「…もしかして、嫌いでしたか?」
「いや、そうではない。」
「そうですか。ではお好きなものをどうぞ。」



冥加さんのフォークはキャロットケーキに向けられた。縦にフォークを入れ、一口サイズを口に運んだ。



「………うまい。」
「ホントですか?」
「料理の腕はあるようだな。」



冥加さんの横顔をのぞくと、微かに笑っている気がした。作ってきてよかったな。私もケーキを一口運んだ。



「うん、おいしい!」
「そうか…」
「あの…紅茶のおかわりをいただいてもいいですか?」



この質問は勇気がいった。だって私は紅茶一杯を飲み終えたら帰れと言われていたから。だからおかわりするのは帰らないのと同じ。



「……構わん。」
「ありがとうございます!」



あともう一杯分だけ一緒にいられる。それだけで確かにしあわせ。友達か恋人かわからない私たちには十分すぎる時間だった。